抄録
冠静脈カテーテル法によるヒト心筋糖質代謝にかんし,従来多くの研究が発表されて来た。一方脂質代謝にかんしては近年脂酸,とくに遊離脂酸(FFA)の代謝が注目されるようになつた.したがつて著者はまず健常者および諸種心疾患の安静時心筋FFA代謝につき検討を加えた.その結果健常心は動脈血濃度に応じてFFAを摂取することを確かめ,またFFA酸素摂取率は心筋呼吸商および糖質酸素摂取率と逆相関の傾向を認めた.糖尿病,冠硬化,心不全は健常者との間に有意の差を認めがたいが,冠硬化と不全では心筋FFA代謝上異なる態度を示した.また最近脂肪組織に対するホルモンの影響が注目されるようになつた.そこで著者はインスリン,アドレナリン,グルココルチコイドの心筋FFA代謝にかんする効果を検討したが,インスリンはFFA利用を抑制し,アドレナリン,グルココルチコイドは亢進させることを認めた.