日本内科学会雑誌
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肺の脂質代謝にかんする研究とくに,遊離脂酸の動脈血・混合静脈血較差について
山田 裕篤
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1966 年 54 巻 11 号 p. 1276-1286

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抄録

近年,肺機能として,肺胞換気,呼吸機能などの他に,脂質代謝にかんする問題が注目されるようになつた.著者は肺の脂質代謝を解明する一助として,慢性肺疾患々者および心疾患々者に右心カテーテルを施行し,遊離脂酸(NEFA)の動・混合静脈血濃度較差をみ,さらに,これをガスクロマトグラフィーで脂酸構成を分析し,動・混合静脈血の脂酸構成を比較観察した.さらにまた,これら較差に及ぼす食餌性脂肪の影響を観察するために,リノール酸エチルおよびバターを投与した.肺はNEFAを放出していることを認め,ことに, NEFA中にオレイン酸,パルミトオレイン酸,およびリノール酸等不飽和脂酸が飽和脂酸より多く放出される可能性,あるいは,飽和脂酸が不飽和脂酸より多く肺で摂取されるという可能性が者えられた.リノール酸エチル投与によつて,肺はNEFAとして,リノール酸をより多く放出することが考えられ,バター投与では,有意の変化はなかつたが,食餌性脂肪はNEFAの動・混合静脈血較差に影響を及ぼしうることを認めた.

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