日本内科学会雑誌
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冠拡張薬の長期使用例にみられたいわゆる泡沫細胞症候群14例の臨床病理学的観察
小野沢 康輔足立 山夫古沢 新平比江島 一昌土屋 滋坂本 保己光永 慶吉小宮 正文
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1970 年 59 巻 11 号 p. 1228-1234

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抄録

骨髄穿刺液に多彩な形態を示す食細胞増加のみられた14症例を経験した.これらの症例は,外来で高血圧症ないし動脈硬化性心疾患の治療中,微熱,体重減少,易疲労感を訴え,精査の結果,肝腫脹,血沈促進, CRP陽性像,好中球増加症,リンパ球の空胞形成像, γ-グロブリン増加,肝機能障害等が証明され,かつ広範囲にわたる諸検査でも感染症,悪性腫瘍は見出せなかつた.これらの症例はいずれも冠拡張薬4-4'-diethylaminoethoxy hexoestrol dihydrochloride (Dh)を5カ月以上の長期にわたり使用していた. 14例中2例は経過追跡不能であつたが,他の12例中3例は経過観察中心不全,膵癌,肝不全で死亡.剖検で肝,脾,骨髄,その他臓器に泡沫様物質の蓄積した食細胞の浸潤を認めた.生存例9例中5例はDh薬中止1年後には上記諸症状の消失が見られた.他の4例は外来にて観察中であるが諸症状の改善が著しかつた.

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