粘液水腫の患者にみられた心陰影の拡大にかんし,臨床経過とともに血行動態的および組織学的検討を加えた.治療により甲状腺機能が正常化するに伴つて心陰影はCTR 0.66から0.49に減じ,自覚症状は全く消失した.治療前後で行なつた心筋生検で組織学上特異的な変化を見出し得なかつた.減弱した心音,低電位およびT波の平低化を示す心電図は心嚢水貯留によるものと解釈され,心陰影が縮小するに伴つて正常に復した.右心カテーテル検査にて心不全症を疑わせる所見は何ら得られなかつた.治療前右室圧,肺動脈圧に交代脈を認めたが治療により消失した.以上の結果より粘液水腫における心陰影の拡大には心嚢水貯留の関与が最も大であると考える.