抄録
牛乳飲用により下痢や腹痛を起こす牛乳不耐症は,日本人には比較的多く,牛乳摂取が増加するにつれて,その原因および対策がますます問題となつてきている.最近われわれは牛乳不耐症のため牛乳飲用を中止したところ,低カルシウム血症と思われる症状を呈した1例を経験し,この症例に対して乳糖分解酵素(lactase)を使用し,有効であつたので報告する.症例は45才の女性. 35才より牛乳飲用による下痢が出現, 40才より牛乳飲用を中止したところ,振せん,筋攣縮などの症状が出現した.牛乳不耐症にかんして諸検査を行ない, lactase deficiencyが疑われた.また,振せん,筋攣縮などの低カルシウム血症に起因する症状は,潜在性副甲状腺機能低下症および牛乳飲用中止によるカルシウム摂取低下によるものと考えられた.本症例にlactaseを使用し,牛乳不耐症は改善し,低カルシウム血症による症状も消失した.