先天性ないし遺伝性溶血性貧血のうち赤血球解糖系の酵素欠乏による一連の疾患は,赤血球酵素異常症と呼ぼれている.このうちpyruvate kinase欠乏症は1961年Valentineらの報告以来,その病態が注目されている.最近われわれは本症の1例を経験した.症例は18才の女子高校生であり, 14才の時より黄疸を指摘されていた.軽度の貧血,網状赤血球増多,骨髄での赤芽球系の増生,赤血球寿命の軽度短縮,高間接bilirubin血症を認めるが免疫血液学的検査に異常を認めず,赤血球酵素活性の測定でpyruvate kinase活性の低下を認めた.また患者親族について血液学的ならびに酵素学的検索を行なつた結果,従来の報告の如く常染色体性劣性遺伝であると推測された.本報告例と共に本邦報告例5例について,若干の考察を行なつた.