1972 年 61 巻 4 号 p. 366-372
正常動物より摘出した腎臓を用いて, erythropoietin (以下Epo)の抽出を試みた.腎のタイロード液homogenateを嫌気的に孵置する操作により,飢餓ラット法による測定で,高い造血活性,およびdose-responseの関係を示す物質が抽出された.しかしながらこの腎抽出物は,多血マウスに対しては,全く造血活性を示さないことから,血中あるいは尿中に存在するEpoとは異なつた機序で,造血反応をもたらすものと考えられる.一方,腎抽出物を投与されたラット血中のEpo値は上昇しており,このEpo値の上昇には,被投与ラットの腎臓を必要としない.また, in vitroで腎抽出物を正常血漿と孵置することにより, Epoを生ずるとの実験成績を得た.以上の知見および他の臨床成績にもとづき, Epo産生に腎が不可欠であることは間違いないが,その産生過程に, Epo前駆物質とその活性化の如き,より複雑な機序が存在する事を推論した.