日本内科学会雑誌
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実験的急性心筋硬塞時におけるglucose-insulin-kalium溶液点滴静注の心血行動態におよぼす影響
大野 嘉章
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1973 年 62 巻 1 号 p. 16-27

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抄録

急性心筋硬塞時の不整脈, shock,心破裂などは,致命的急性期合併症として警戒を要する.この不整脈, shockなどの治療にglucose-insulin-kalium溶液の点滴静注が有効であるといわれる.そこでglueose-insulin-kalium溶液が如何なる機序により,効果をもたらすかを解明する目的で,実験的急性心筋硬塞犬を作成し, glucose-insulin-ka1ium溶液を点滴静注し,その際の心電図,脈拍数,心拍出量,心収縮力,左室筋張力,左心内圧および血圧,冠動静脈血電解質およびcatecholamine較差などを結紮前および結紮後60分まで10分毎に観察し,さらにglucose-insulin, glucose-kalium, glucoseの各点滴群および無処置群のそれらと比較検討した.不整脈はglucose-insulin-kalium群で13.3%にみられたのに対し,無処置群では58.3%にみられた.脈拍数は全群で増加した.心拍出量は無処置群以外の4群で回復傾向を示した.左心内圧および血圧はinsulinを含んだ群で早期に回復した.心収縮力および冠動静脈血電解質,すなわちkalium, calcium, magnesium較差は, kaliumを含んだ群で早期に回復した.左室筋張力はglucoseおよび無処置群以外の3群でやや高値を示した.冠動静脈血catecholamine較差は無処置群以外の4群でnoradrenalin,adrenalin較差ともに上昇したが,無処置群ではnoradrenalin較差は下降し, adrenalin較差は下降しなかつた.

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