日本内科学会雑誌
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Asbestosisを伴つた腹膜中皮腫の1例
小泉 岳夫桝田 一男満谷 夏樹椋田 知行石津 弘視桜井 幹巳
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1973 年 62 巻 7 号 p. 783-787

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抄録

腹膜中皮腫は比較的まれな疾患とされているが,最近欧米において本疾患者の増加が報告され,その原因として諸産業での需要が増大しつつあるアスベスト粉塵吸入が重要視されている.本症例はアスベスト加工業に従事し,長期間にわたつてアスベスト粉塵を吸入していた63才の男で,腹部膨満,全身倦怠を主訴とし,著明な腹水と貧血,血沈亢進, CRP陽性等を認めたほか,腹水検査では滲出液の性状を示し,異型性の強い細胞が検出された.また胸部X線像では両肺野に線状陰影を認め,これはとくに左下野に著明で,胃X線像では幽門部に伸展不良の所見がみられた.剖検では腹膜,腸間膜,胃,腸,肝臓および脾臓は灰白色の腫瘍に被われ,胃,腸および肝臓では漿膜面より内部に向かう異型性の強い中皮細胞の滲潤がみられ,腹膜中皮腫と診断された,本症の発生とアスベスト吸入との関連について考案した結果についても述べた.

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