日本内科学会雑誌
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10年間にわたり観察されたasymptomatic Bence Jones蛋白尿
Bence Jones蛋白尿のもつ臨床的意義の再検討
藤井 浩加納 正
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1975 年 64 巻 11 号 p. 1256-1263

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抄録

大量の尿中Bence Jones蛋白が10年間にわたり排泄されながら無治療で非進行性に,無症状に経過している貴重な症例を経験した.調べた限りでは本邦で未だその様な報告はみられない. 56才の男性で1964年検診にて蛋白尿を指摘され入院.理学的所見に異常はない.尿中にB J蛋白が証明され,尿蛋白の90%以上はβ領域のmonoclonal spikeにあり,免疫電気泳動ではλ-L鎖,超遠心分析でdimer型B J蛋白と判明した.経過中尿B J蛋白は1.0~4.0g/日で血沈値,血清アルブミン値,末血像は正常範囲内である.γグロブリン値,正常免疫グロブリンには軽度の減少がみられた.骨髄中形質細胞数は13.2~6.4%でその形態に若干の異型性がみられ,蛍光抗体法によるK鎖, L鎖産生細胞の比は6.5: 3.5であつた.全身の骨X線検査には異常なく,直腸生検でアミロイド沈着は証明されなかつた. B J蛋白尿は骨髄腫,原発性マクログロブリン血症,原発性アミロイド症などにみられるが,続発性単クローン性免疫グロブリン血症ではごく希にしか検出されず,しかも少量もしくは一過性である. B J蛋白尿の大量長期排泄が認められる場合には, malignant signとしてとりあげる従来の一般的見解は否定しえないが,本例のように長期無症状例もあるので,その臨床的意義について考察検討した結果,このような例もpotentially malignant typeとして提唱する.かかる立場よりB J蛋白産生と免疫グロブリン産生細胞の腫瘍性増殖を示す疾患との関連を考察した.

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