日本内科学会雑誌
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房室伝導障害とsick sinus syndromeを伴つたWolff-Parkinson-White (WPW)症候群の1例
望月 茂桐山 利昭角水 圭一和田 勝磯田 次雄川西 康夫和多田 光朗水谷 孝昭
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1975 年 64 巻 11 号 p. 1264-1269

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抄録

WPW症候群に房室ブロックを伴うことは希といわれるが,房室伝導障害に加えてsick sinus syndromeを伴つたWPW症候群の1例につき報告する. 50才女子. 14~15年前より頻拍発作があつた.本症例は洞調律時に典型的なWPWパターンを示し,心房ペーシングによりペーシングレートを増加してもQRSの幅や形は洞調律の時と全く変化しなかつた. His束心電図ではHis束のふれは洞調律時からすでにQRSの中に埋もれていると考えられる.潜在的に正常伝導系の伝導障害が存在するために,興奮はほとんど副伝導路(Kent束)のみを通つていると考えられた.本症例が正常伝導型の洞調律を1度も示さなかつたことも正常伝導系の伝導障害を示唆する.さらに正常伝導波形の心房細動を示した時,房室ブロックを示唆する所見を示した.また,本症例は房室伝導障害に加えてsick sinus syndromeを伴つていた. sick sinus syndromeを伴つたWPW症候群の報告はわれわれのしらべた範囲では見当らない.本症例は何らかの原因により心筋にびまん性の変化が起こり洞房結節,房室伝導系に障害をもたらしたものとして興味深い.著明な心肥大, 3音, 4音の存在,さらに弟がWPW症候群であり,家族に心疾患での死亡例が多いことなどを考え合わせると,特発性心筋症ないし家族性心筋疾患の可能性も大きいと考えられる.

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