日本内科学会雑誌
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冠状動脈入口部の形態学的研究およびその動脈硬化性狭窄の臨床病理学的検討
加納 達二
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1975 年 64 巻 12 号 p. 1361-1370

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抄録

冠状動脈硬化についての病理学的研究は数多くなされているが,冠状動脈入口部の硬化による狭窄の意義について報告はすくない.著者はこの冠状動脈入口部の形態・動脈硬化病変に注目し,無作意に選んだ剖検心70例について,臨床病理学的研究を行なつた.冠状動脈入口部は特有なくぼみ,いわゆるロート構造をもち,その形態は多種多様であるが,右は二重輪,左はコメット形が多い.組織学的にはロート構造は内側を放射状に走る縦走筋と,外側をとりまく輪状筋が特殊構造をつくつている.入口部の動脈硬化は加令とともに強くなるが,左にくらべ右入品部で動脈硬化が強い.動脈硬化の出現部位は‘ひさし’形成を含めて,右ではロート部上縁に,左では右上縁に出来ることが多い.入口部の動脈硬化による狭窄は,右では70例中11例, 15.7%,左では7例, 10%,両入口部狭窄は4例, 5.7%にみられる.心筋硬塞はこの入口部狭窄群14例中4例, 28.5%にみられ,対象に比べて心筋硬塞の合併率が高かつた.以上の研究から冠状動脈入口部は一種独特の形態をもち,また虚血性心疾患では冠状動脈自体の病変ばかりでなく,冠状動脈入口部の硬化,および狭窄病変にも注目すべきことを示した.

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