日本内科学会雑誌
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月経時喀血を繰り返した肺子宮内膜症の1例
山本 宏司田代 典夫木村 清延阿部 庄作宮本 宏川上 義和大崎 饒村尾 誠川口 勲
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1980 年 69 巻 12 号 p. 1650-1654

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抄録

月経随伴性喀血を主訴として入院し,組織学的に肺子宮内膜症と診断された1例を報告する.症例は44才の主婦. 6年前より月経時に,時々喀血を繰り返していた.既往歴では2回分娩, 3回人工妊娠中絶があり, 6年前に子宮筋腫(子宮腺筋症?)の診断を受けている.月経時の胸部X線写真は右肺の心横隔膜角に約3cmの結節状陰影と周囲の浸潤影を示していた.月経終了時の胸部X線写真では結節状陰影は空洞化し,気管支造影でB8bの気管支が空洞に連絡しているのを認めた.右心カテーテル検査では左上大静脈が遺残していた.右下葉切除をした所,空洞壁の一部に隆起があり,そこに子宮内膜組織が認められた.肺子宮内膜症は極めてまれな疾患で,現在まで世界で10例の報告があるにすぎない.本邦では本症例が第1例と思われる.発生機序は,報告例がすべて妊娠または子宮手術の既往歴があることから,血行性転移説が最も信じられているが,不明の点も多い.

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