日本内科学会雑誌
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グアム島の筋萎縮性側索硬化症にみられるhyperostosis frontalis internaの臨床的意義について
村上 信之祖父江 逸郎Kwang-Ming CHEN
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1981 年 70 巻 1 号 p. 92-97

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抄録

グアム島には筋萎縮性側索硬化症(ALS)が異常な高率で発生していることは周知である.また同島のALSは他地域のALSと異なる数多くの臨床病理学的特殊性を備えているため,人種的背景の多面的追究が必要と考えられている.著者は同島に滞在して実際にALSを観察する内に,頭蓋単純X線写で前頭骨の異常な肥厚hyperostosis frontalis interna (HFI)がしばしばみられることに注目した.そこで本邦ならびにグアム島のALSの頭蓋骨の変化を頭蓋単純X線写で比較検討した.その結果,グアムALSにはHFIを示す症例が高率に認められたが,対照と比較したところ有意差は得られず,原住民チャモロ人に多くみられる一般的変化であると考えられた.一方,本邦人はALSを含めてHFIの頻度は諸外国と比較しても極めて低率であつた.すなわち,頭蓋前頭骨の厚さには明らかな人種差があり,女が男より厚く,加令に伴い厚くなる傾向が認められた.頭蓋骨変化には内分泌異常,栄養,食事の問題,特にCa摂取量など種々の背景が推測される.さらに前頭骨が肥厚する現象は加令と密接に関係している点が主要であるため,グアム島チャモロ人は一種の加令現象が促進されている可能性を指摘した.本調査ではALSとの相関は統計学的に認められなかつたが,骨の変化には本邦人とチャモロ人の間に相異がみられたことについては,人種的ならびに生活様態などの背景の存在が示唆される.

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