日本内科学会雑誌
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一卵性双生児の双方に発生した全身性エリテマトーデスの症例
山門 実多川 斉猪狩 友行田中 茂
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1981 年 70 巻 1 号 p. 87-91

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抄録

全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な自己免疫疾患であるが,家族内発生,同胞発生のみられることから, SLEの発症と遺伝の問題が最近注目されている.われわれは一卵性双生児の双方に発症したSLEを経験した.症例1(姉): 25才,主婦.関節痛で発生し,第一子分娩後関節痛の増悪と顔面蝶形紅斑出現.症例2 (妹): 25才,主婦.第一子分娩後関節痛出現.血沈1時間値56mm (症例1), 1時間値61mm(症例2),白血球3300, 3600;血小板6.4×104, 11.2×104; LE細胞双方陽性;抗核抗体160倍(speckled), 80倍(homogenous);抗DNA抗体160倍, 320倍, T細胞は45.7%, 48%であり, B細胞はEACロぜット17.4%, 27.9%, Fcロゼット11.4%, 15.3%であつた.症例1では諸種ウイルスに対する抗体価が高値を示した.腎組織像では両例ともに光顕像にて軽度のメサンギウムの増殖を認めた.蛍光抗体染色像では,症例1はメサンギウム中心にIgG, C3が顆粒状沈着を示したが,症例2は係蹄壁にも同様の沈着を認めた.卵性は東大脳研究所井上の方法により97.5%の確率で一卵性と判定された. HLA型は双方A2, A10, B5, B13. MLC反応では刺激性は保持されていたが反応性は低下していた.一卵性双生児のSLEに関する報告は内外で22件にも及び,遣伝因子の関与が示唆される.本報では組織適合性検査によつて遺伝因子の重要性を確認した.しかしながら,臨床像の差異から,未知の因子の関与も推察される.

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