日本内科学会雑誌
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高オルニチン血症,高アンモニア血症およびホモシトルリン尿症を呈する1例
遠藤 高夫斉藤 昭光坂本 真一谷内 昭大柳 和彦十川 英明柄崎 英明田村 武雄和田 武雄渡辺 邦彦
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1981 年 70 巻 12 号 p. 1714-1723

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抄録

わが国初例と思われる高オルニチン血症,高アンモニア血症およびホモシトルリン尿症を呈する1例(41才,男)を経験した. Shih et alの初例以来の報告8症例と比較し,本症の病態,治療および早期診断等について考察した.本例は遺伝素因は不明.小学時より知能低く, 40才時意識障害と高アンモニア血症を呈したことが契機となり発見された.オルニチン経口負荷時血中アンモニアの低下が注目された.リジン経口負荷では著変なく,尿素サイクルの諸酵素活性にも異常がみられなかつた.以上の所見より,本例は従来の高アンモニア血症のI型やII型とは異なることが確認された.同様の既報例との比較では,諸検査成績や電顕所見の上で多少の相違点もあり,病因病態解析上の課題が残されている.しかし文献的には本例と同様にオルニチン負荷後血中アンモニア低下をきたす例もあり,病因としてミトコンドリア膜におけるオルニチンの移送障害が推測されている.この考え方に基づき実施したオルニチン負荷療法では,長期間血中アンモニアの低下が持続し,意識障害もみられず,この面での有効性が示された.本例のように,軽症例では成人になつて発見される場合もあるので,早期発見法の開発が望まれるが,オルニチン誘導体3-aminopiperid-2-oneの尿中における定性的検出が他の高オルニチン血症と同様に本症の発見にも役立つ可能姓が指摘されている.

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