日本内科学会雑誌
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加令に伴う鼻出血の増悪と睾丸のLeydig細胞機能低下を認めたOsler病の1例
堀川 博通今野 孝彦芝木 秀俊
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1981 年 70 巻 12 号 p. 1724-1729

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抄録

皮膚粘膜内臓の毛細血管拡張病変,反復する鼻出血,舌出血および常染色体優性遺伝歴をもつ典型的Osler病症例を経験した.本症は先天性血管異常が主病因とされているが,血管病変,出血傾向は加令に伴い増悪し,治療上エストロジェンが有効であることにより,本例の内分泌機能を検討した結果,睾丸のLeydig細胞機能低下(テストステロン,エストラジオールの低下)を認めた.症例は69才の男性, 31才過ぎより鼻出血を繰り返し, 40才頃より舌, 55才頃より手指に点状血管拡張が出現し,加令に伴い鼻出血が増悪のため,当科へ入院した.舌,手指,鼻粘膜,眼瞼結膜,口唇,顔面,耳殼,口蓋に点状,網状,くも状血管腫様の毛細血管拡張と食道,腎, S状結腸に網状の病変を認めた.同家系に7例のOsler病例を見い出した.皮膚組織上,一層の薄い内皮細胞から成る著明な毛細血管拡張を認めた.内分泌検査上,甲状腺系,副腎皮質系に異常なく,男性性腺系にLeydlg細胞機能低下を認めた. Osler病の反復する鼻出血に対するエストロジェンの止血効果の多数の報告を考え合わせると,本例の増悪しつつある鼻,舌出血にこのLeydig細胞機能低下が増悪因子として関与している可能性が推察された.

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