日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
左室壁拡張動態に関する臨床的研究
特にasynchronous relaxationについて
友常 一洋
著者情報
ジャーナル フリー

1982 年 71 巻 6 号 p. 764-777

詳細
抄録

左室造影像において,しばしば収縮終期より僧帽弁が開くまでの等容性弛緩期に左室壁の一部が他の部位に先がけて外方に突出する左室壁拡張動態の異常がみられる.これをasynchronous relaxationと名づけ,その臨床的意義について検討を加えた.対象は狭心症群50例,心筋硬塞群50例,正常群40例,僧帽弁狭窄症群20例,僧帽弁逸脱症候群10例の計170例である. asynchoronous relaxationは正常群10%に対し,狭心症群72%,心筋硬塞群46%と有意の高頻度で観察され,特に前下行枝病変を有する狭心症群では80%に観察された.大動脈-冠状動脈バイパス術前後における検討では,術前観察されたasynchronous relaxationは消失ないし減弱していた. asynchronous relaxationは前下行枝の支配領域に観察され,同部位の左室壁収縮動態は正常例が多く,高度に障害された部位には観察されなかつた.以上よりasynchronous relaxationは少なくとも一部には心筋の虚血が関与しており,心筋の虚血が左室壁動態に及ぼす早期の現象である可能性が示唆された.また一部症例にはdp/dt/PmaxをY軸に, p/PmaxをX軸にプロットしてできるリサージュ像を描き,左室造影像と対比して検討した.その結果asynchronous relaxationを示す症例では,多くが弛緩時相曲線上にゆがみを生じ,これは左室壁拡張動態の不均一性を示すものと推定された.

著者関連情報
© (社)日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top