日本内科学会雑誌
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発熱と肝腫大で発症し,適切な診断により救命し得た原発性肝結核症の1例
樋口 茂樹沢田 美彦和田 一穂木村 あさの千葉 陽一吉田 豊
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1982 年 71 巻 6 号 p. 824-829

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抄録

発熱と肝腫大で発症し,肝生検で確定診断し救命し得た肝結核症の1例を経験したので報告する.症例は24才,主婦.昭和55年6月第一子分娩後,異和感を覚えていた.昭和55年9月,腹部不快感,咳嗽, 38.5°Cの発熱があり肝を4横指触知され,精査を勧められた.同年9月11日, 42°Cの発熱,頭痛,嘔吐あり救急病院へ入.院肝脾腫と肝機能障害あり,高熱が持続するため,精査の目的で9月25日当科入院.体温38.5°C,肝を剣状突起下12cm,脾を肋骨弓下3.5cm触知したが,皮膚発疹,黄疸,リンパ節腫大なし.静脈血培養陰性で胸部X線像は異常なし.入院後も高熱が持続するため, SBPC 10g投与するも無効,肝結核の可能性も考え, SM 10g, INH 0.5g, EB 1000mg投与後,一時若干の下熱をみたが,再び高熱が出現した.入院2週間後,肝生検を敢行し肝結核症の診断を得た.抗結核薬投与にて徐々に下熱と肝脾の縮小を認めた.本症例は胸部X線検査で異常なく,喀痰結核菌検査も塗抹では陰性であつた.培養にて後日,少数の結核菌陽性であつた.巨大肝脾腫と発熱を呈する疾患として肝結核も,常に念頭におくべき疾患である.本例はTerryらの言う“primary” miliary tuberculosis of the liverに相当する希有な症例と考えられた.本症の診断,発生機序,治療等につき文献的考察を加えて言及した.

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