日本内科学会雑誌
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岐阜県ではじめての発生をみた恙虫病 -DICで死亡した1剖検例を中心に-
佐々 寛己柴田 哲男大場 みどり大久保 満丹羽 豊郎松井 永二
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1984 年 73 巻 3 号 p. 401-407

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抄録

血管内凝固症候群により死亡し,死後の血清反応により恙虫病と判明した1剖検例を経験したので,当地区においてその後発生した5例とあわせて報告する.症例は22才,女性で,揖斐川流域である岐阜県安八郡神戸町に注み,自室で植木裁培をしていた生活歴がある.高熱と左浅頚部リンパ節腫脹,左頚部の皮膚潰瘍,全身の発疹を主徴とし,白血球および血小板の減少が認められた.セファロスポリン系抗生物質にも反応しないため,第10病日より当科へ入院した.入院時の検査成績より血管内凝固症候群と薬物性肝炎を併発したウイルス感染症を推定し,諸治療を施したが効なくDICの悪化により第16病日に死亡した.病原診断検査によりGilliam型リケッチアによる恙虫病と確認された.剖検では,肺,心筋,肝および脾を中心にリンパ球を主体とする炎症性細胞浸潤が認められた.その後当地区で5例が本症と診断されたが,内訳はGilliam型2例, Karp型3例で,いずれもテトラサイクリンの投与により治癒した.本症は東北や新潟地方に多発する風土病の如く考えられて,他の地区では軽視されていた.しかし昭和50年代以降,その発生数が増加し,かつ全国各地で認められる様になり,もはや風土病でないことが強調されている.発熱と特有の刺し口,所属リンパ節腫脹,発疹等で本症を疑い,間接蛍光抗体法又は免疫ペルオキシダーゼ法による確定診断を行なつて,早期にテトラサイクリン系抗生物質を投与することが肝要である.

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