抄録
成人型家族性徐脈性不整脈(FBA)の4家系について,その心電図所見,臨床症状,血行動態,心筋組織所見,および臨床経過について検討し以下の結果を得た. 1)家系内心電図検査19施行した55例中徐脈性不整脈は19例(34.9%)で,これらは脚ブロック. QRS低電位, poor R-wave progression, T波異常, VPCやVTを高頻度に合併した. 2) 19例中心不全の合併が10例にみられた. 3) FBAの病像完成は30~40才台と推定された. 4)心拡大,左室拡張が著明で,その心機能は明らかに低下し,拡張型心筋症類似例が混在した. 5) 8例の心筋組織所見として,肥大,変性,錯綜配列,線維化がみられた. 6)未治療例は大部分が突然死し,予後不良であつたが, pacemaker治療例の経過は比較的良好で,有効な治療といえる. FBAの少なくとも一部の例は伝導系障害に加え,固有心筋障害を合併し,特発性心筋症ないしはその類縁疾患と推定される. FBAの臨床像を特に心筋症との関連の上で検討した.