日本内科学会雑誌
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不明熱で発症し,アミロイドーシスを合併した潰瘍性大腸炎の1例
京ケ島 守渡辺 洋伸畠山 牧男溝口 義明隅谷 護人狩野 庄吾田中 昌宏木村 健
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1984 年 73 巻 6 号 p. 849-855

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抄録

不明熱で発症し, 3年後,アミロイド腎によるネフロ一ゼ症候群を合併した潰瘍性大腸炎と診断された1例を報告する.症例は29才,女,主婦.昭和54年7月, 39°Cに及ぶ発熱で第1回入院.腹部所見にて,肝を1横指触知.尿所見に異常を認めず,各種細菌学的検査もすべて陰性であつたが,炎症反応の強陽性ならびに軽度の肝機能障害が認められた.発熱は各種一般抗生物質および抗結核剤に対して全く不応性でプレドニゾロンの投与にて下熱,外来で経過観察された.昭和56年8月,昭和57年1月と37°C台の発熱,疝痛発作様の腹痛を主訴に入院.安静,プレドニゾロンの増量で症状の改善がみられたが,便潜血は持続的に陽性.注腸X線造影は正常であつた.昭和57年7月,再度37°C台の発熱,腹痛と大量の蛋白尿,円柱尿を認め入院.注腸X線造影,大腸内視鏡検査ならびに直腸粘膜生検で,潰瘍性大腸炎と診断された.腎生検では,糸球体ならびに血管壁に塊状,不定形物質を認め,コンゴーレッド染色,偏光顕微鏡所見にてアミロイドが陽性で,電子顕徹鏡でもアミロイド線維が確認された.プレドニゾロン,サラゾピリンの投与にて潰瘍性大腸炎の軽快がみられるのに並行し,尿所見の改善もみられ,潰瘍性大腸炎に合併した続発性アミロイドーシスと考えられた.両者の合併例は文献的にみても非常にまれであり,本例は貴重な1例と考えられた.

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