日本内科学会雑誌
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鉄芽球性貧血様のrefractory anemiaを伴つた本態性成人型Fanconi症候群の1例
村井 善郎池淵 研二深山 牧子三輪 哲義白木 正孝森 真由美白倉 卓夫
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1984 年 73 巻 7 号 p. 961-967

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抄録

Fanconi症候群にsideroblastic anemia様のrefractory anemiaを合併した症例を報告し,考察を加えた.症例は92才,女性. Cd汚染地区での居住歴なし. 1972年動悸,息切れ,貧血,腰痛があつた. 1976年11月貧血の精査のため当院入院.肝脾腫なし.入院時検査所見で代謝性アシドーシスを認めた. NH4Cl負荷試験で尿酸性化能の障害があり,遠位尿細管障害の存在が考えられた.腎性糖尿,低燐血症,高燐尿症に加え,汎アミノ酸尿および骨X線像での骨萎縮像などの成績より, Fanconi症候群と診断された.骨髄腫および後天的にFanconi症候群を来すとされる要因は認めなかつた.活性型ビタミンDに反応し,腰痛,腎性糖尿,低燐血症の改善を認めたが, 1981年4月うつ血性心不全に血管内凝固症候群を併発し死亡した.剖検では両側腎とも著明に萎縮し,組織学的には細動脈硬化像によるnephronの荒廃に加え,間質性腎炎像を強く認めた,骨は典型的ではないが, osteoporo-malaticな変化があつた.本症例は低色素性,小球性貧血を合併していた.骨髄では赤芽球過形成(環状担鉄芽球(〓))に加えて,無効造血の存在,骨髄赤芽球δALA合成酵素低値,ヘモグロビン異常を認めるなどの成績より, refractory anemiaと診断された. Fanconi症候群と, refractory anemiaが合併したことは,両疾患の悪性腫瘍との関係を考慮すると,両者の病態を検討する際,示唆にとむ点と思われた.

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