日本内科学会雑誌
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中脳への腫瘍塞栓により多食症をきたした原発性肝細胞癌の1剖検例
林 克裕宇野 久光丸山 俊博橘 宣祥津田 和矩片岡 寛章河野 正
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1987 年 76 巻 3 号 p. 441-444

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抄録

脳腫瘍,脳炎,外傷などで視床下部性の多食症が生じることが報告されているが,脳への腫傷塞栓後に起こった報告はない.症例は55才,男性.原発性肝細胞癌の診断で入院治療中,左不全片麻痺,右動眼神経麻痺,左小脳失調が出現し,翌日より多食となり, 4日間で体重が3kg増加した.性欲亢進,情動変化, oral tendencyはなく,肝不全で死亡.剖検では肝細胞癌を伴う甲型肝硬変で,門脈,肝静脈は腫瘍により閉塞されていた.右中脳上丘レベルで動眼神経核,赤核に腫瘍梗塞を認め,右視床下部腹内側核の神経細胞変性とグリオーシスがみられた.多食の起こり方から,その原因を梗塞部に軸索を出している腹内側核細胞の逆行性変性によるものと考えた.

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