1987 年 76 巻 4 号 p. 528-532
原発性胆汁性肝硬変(PBC)にmonoclonal gammopathyや多発性骨髄腫の合併はまれであるが,無症候性PBCに多発性骨髄腫を合併し,その後原発性甲状腺機能低下症を発症した70才女性を経験した.三者のほぼ平行した増悪と治療による改善がみられ,ステロイド薬とcyclophosphamideによる化学療法で骨髄像,血中γ-グロブリン値の改善に伴って抗ミトコンドリア抗体価,血中IgM,アルカリフォスファターゼ値,抗マイクロゾーム抗体価は著明に低下,同時に血中TSH binding inhibitor immunoglobulinの改善を伴って甲状腺機能も正常化した.本例におけるこれら三つの病態の密接な関連が示唆された.