1987 年 76 巻 4 号 p. 533-536
全身性エリテマトーデス(SLE),甲状腺癌の合併をみたIgA単独欠損症(IgA欠損症)の21才男性例の報告である.症例. 16才SLE (紅斑,発熱,関節痛, LE細胞陽性,各種自己抗体陽性,ループス腎炎), 21才甲状腺癌とIgA欠損症の診断を受けた.易感染傾向を認めない.本例ではいくつかのまれな病態の併存がみられた.すなわち,若年男性のSLEと甲状腺癌(T1N1M0)に加えてIgA欠損症の重複である.これらの合併は偶然とみるより相互に因果関係があるとみるのが自然である.免疫不全症・悪性腫瘍・自己免疫疾患の3病態を有機的一体のものとして把握し,その背景に免疫異常を考える立場から考察した.