1987 年 76 巻 6 号 p. 878-883
症例は30才,男性で右不全麻痺にて入院.口唇,掌蹠に色素斑を認め,心尖部に汎収縮期性心雑音を聴取した.心エコー図,心臓カテーテル検査により左房内腫瘍を確認,これによる脳塞栓と診断し,腫瘍摘除術を施行,組織学的には粘液腫であり,僧帽弁腱索断裂をも伴っていた.消化管ポリポーシスは認められなかったが,色素斑はPeutz-Jeghers症候群の色素斑と一致した. Peutz-Jeghers症候群は種々の臓器に腫瘍を合併しやすく,また,左房粘液腫は皮膚病変を伴うことがあることを考慮すると,本例の色素斑と左房粘液腫との間には,成因上,何らかの関係があるものと推測された.さらに,左房粘液腫と僧帽弁腱索断裂との合併も極めてまれなものであった.