1988 年 77 巻 6 号 p. 858-862
症例は10年の罹病歴を有する45才のインスリン依存型糖尿病の女性.従来,蛋白尿は認められなかったが,急速に尿蛋白陽性となり4カ月後にはネフローゼ症候群となった.安静,食事療法,利尿薬等には全く反応しなかったが,ステロイド療法が奏効し,完全寛解となった.腎生検の結果はメザンギウム増殖性腎炎であった.糖尿病患者におけるメザンギウム増殖性腎炎によるネフローゼ症候群の合併,およびステロイド療法の著効例の報告は極めて少ない.本症例は既往歴に重症筋無力症,橋本病,悪性胸腺腫を有し,今回のネフローゼ症候群の発症に何らかの自己免疫的機序の関与した可能性が推測される.