日本内科学会雑誌
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渇感と抗利尿ホルモン(ADH)分泌の浸透圧閾値の低値へのresettingを示した下垂体腺腫の1例
佐藤 一俊木村 時久太田 耕造飯竹 一広井上 実太田 昌宏羽二生 邦彦吉永 馨松井 邦昭
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1988 年 77 巻 8 号 p. 1251-1256

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抄録

下垂体腺腫により多飲,多尿,視野異常および低Na血症を呈した症例を報告する.症例は50才女性で,下垂体腺腫と診断され,腺腫亜全摘術を受けた.術後,多飲,多尿に対しdD-AVPを使用したが,低Na血症は増強した.前葉ホルモンは正常で,血漿浸透圧(Posm),尿浸透圧(Uosm)は低値を示した.脱水試験,高張食塩水負荷により血漿ADH (PADH)は増加し尿濃縮を認めたが, Posmは依然低値であった.水負荷によりPADHは抑制され希釈尿が排泄されたが,渇感は持続した. phenytoinにより渇感の抑制と尿量の減少,低Na血症の改善を認めた.水電解質異常は, ADH分泌と渇感のosmostatの低値へのresettingが原因と考えられ, phenytoinによる治療が有効であった.

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