1991 年 80 巻 10 号 p. 1617-1619
肝硬変では,肝細胞の数の低下に加えて肝内外の短絡路が形成され,細網内皮系の貪食機能も低下する.従って細菌感染とくに腸内細菌感染にかかり易い. Denmarkにおける1986年の統計では,年間に肝硬変患者の4.5%に菌血症が合併することが報告されている1).菌血症は肝硬変症の末期に多く,不明の発熱や衰弱の時に疑いを持たねばならない.しばしば誤診される.とくに特発性細菌性腹膜炎,肺炎などの呼吸器感染症,尿路感染等も合併し易い.また肝硬変症には胆石の合併が多いから,胆道感染症も起こり易い.結核は一般に減少したが,肝硬変症では結核性腹膜炎の合併がなお発見されている.