1992 年 81 巻 12 号 p. 1951-1954
膵臓癌の診断における血清腫瘍マーカー,膵酵素について概説した. CA19-9やSPan-1などモノクローナル抗体を用いた糖鎖抗原が開発され,小膵癌の陽性率は確かに向上したが,膵癌の予後を大幅に改善するようなマーカーはいまだ発見されていない.現存のマーカーを組み合わせて早期の膵癌例での陽性率を向上させるcombination assayの試みが行われている.糖鎖抗原の構造が明らかになるにつれて, combination assayにおいて組み合わせるマーカーの選択についての論理的な裏付けが確立されつつある.将来的には癌遺伝子や遺伝子産物による腫瘍マーカーの開発が期待される.