日本内科学会雑誌
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糖輸送担体
病態における異常とその意義
清野 裕
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キーワード: 糠輸送担体, 腫瘍, 糖尿病
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1993 年 82 巻 12 号 p. 2077-2082

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抄録

生体にとって必須のエネルギー源であるブドウ糖は糖輸送担体と呼称されるキャリア蛋白によって輸送される.これには能動輸送にかかわるNa+/ブドウ糖共輸送担体と促通拡散型糖輸送担体の2種類存在するが,両者は全く異なるものである.後者はあらゆる細胞に発現しているが,少なくとも5種類(GLUT1~GLUT5)存在して,一つのファミリーを形成している.またある程度組織特異的に発現しているが,一つの組織で2種類以上発現することもある.癌では糖代謝の亢進が認められるが,癌化に伴って糖の基礎輸送に関与するGLUT1とGLUT3の発現が増大し,膵癌などでは癌の補助診断になりうる可能性がある.糖尿病は末梢の糖利用の障害が特徴であるが,発症初期に脂肪組織でのGLUT4の発現は低下する.さらにNa+/ブヂウ糖糖輸送担体やGLUT1の遺伝子異常症も明らかにされつつあり,疾患との関連性が注目されつつある.

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