日本内科学会雑誌
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虚血性脳血管障害とt-PA
山口 武典
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1994 年 83 巻 7 号 p. 1199-1205

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抄録

虚血性脳血管障害における血栓溶解療法の有効性に関しては,まだ国際的なコンセンサスは得られていない.血栓親和性のより強いt-PAの開発によって,本療法の研究が再び注目されてきた.わが国では,以前から脳血栓症に対するウロキナーゼの有用性は容認されており,その作用機序としては微小循環の改善と血管内血栓の進展防止が考えられている.
ここでは, “血流再開を目的とした血栓溶解療法”の治療効果(再灌流率,改善度)と出血性合併症の危険性の有無について,これまでの成績の要約を述べ,症例の選択と治療開始時間の重要性を強調した.最近,わが国では症例を発症6時間以内の脳塞栓症に限定し,プラセボを対照薬とした二重盲検法による検討(2,000万単位, 60分間点滴静注)が行われ,再灌流率,臨床症候改善率ともにt-PA群で明らかに勝っていたという成績が得られている.これまでの全ての検討成績をまとめたmeta-analysisの結果,本療法は有効である可能性が高いという報告がなされている.

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