抄録
症例は38歳男性. 30歳時よりインスリン非依存性糖尿病にて経口血糖降下薬の投与を受けていた. 37歳時,誘因なく水様下痢を発症. 1日6~7回,夜間に多く1年程続き便失禁を伴ったため精査目的にて平成8年9月当科に入院した.糖尿病性下痢症と診断し,ロペラミド,耐性乳酸菌等を投与したが効果なく,コレスチラミン単独投与により,症状の著明な改善が見られた.コレスチラミンは腸管内で胆汁酸と結合し,腸管内における胆汁酸の瀉下作用を抑制するため糖尿病性下痢症に有効と考えられ,本症の治療の1つとして試みる価値があろう.