日本内科学会雑誌
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脳卒中の新しい治療
成冨 博章
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1999 年 88 巻 10 号 p. 2052-2056

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抄録

「脳卒中は一旦罹患したら有効な治療法は殆どない」という考え方が,従来,一般住民のみならず医師の頭脳に刻まれてきたと思われる.このため脳卒中が疑われても意識障害がないかぎり寸秒を争って専門医を受診するケースは稀であった.しかし脳梗塞急性期の治療は最近急速な進歩を遂げつつあり,超早期に治療を開始さえすれば劇的な症状改善が得られることも稀ではなくなってきた.現時点で有効性が証明された治療は組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)による血栓溶解療法だけであるが,脳保護薬療法,軽微低体温療法など今後の有用性が期待される治療法は少なくない.虚血に陥った脳が生命を維持しうる時間は3~6時間程度であるとされている.脳梗塞患者が永年の後遺症に悩むか否かは発症後の数時間以内に治療を開始できるか否かにかかっている.

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