2001 年 90 巻 12 号 p. 2503-2509
近年の発生生物学の進歩により生体の再生修復機構の分子的解明が進み,組織,臓器,器官を再生させる新しい医学医療の分野が急速に開けつつある.組織再生に必要な三要素である細胞,細胞外基質,増殖再生因子の三要素を駆使して再生医療が行われている.すなわち,発生生物学,発生工学,幹細胞生物学,増殖再生因子研究,生体材料学,組織工学等が互いに補完し合う形で,生体に具備されている再生修復力を向上させ,損傷した臓器の再生を促進させ,あるいは機能を代替し得るハイブリッド人工臓器の開発にいたる等,現代の医学が直面する臓器機能不全症を病態の中核とする疾患群に新たな治療戦略をもたらすものと考えられる.この領域の確立,実現は今世紀の医学,医療の重要なテーマの一つである.