2001 年 90 巻 2 号 p. 344-349
末期腎不全の抜本的対策としての腎移植は優れた免疫抑制薬の開発や移植施設の長年の苦労の上に培った臨床技術の向上によりその成績は確実に改善した.年間移植数もここ数年50例ずつ増加している.しかしその増加数のほとんどは生体腎移植に依存しており,臓器移植に対する国民的関心とは逆に,実際の医療現場では思ったほど献腎移植が増加していない.また移植腎の2年目以降の長期生着に関しては依然,年間3~5%の割合で慢性移植腎障害による移植腎喪失がみられる.慢性移植腎障害とは免疫学的(いわゆる慢性拒絶反応),非免疫学的(ドナーの腎年齢,免疫抑制薬の腎毒性,再発腎炎,高血圧,高脂血症等)な種々の要因で移植腎の構造的破壊をもたらすもので,透析大国であるわが国の少ない腎移植の環境のなかで,いかにこの慢性移植腎障害から移植腎機能を守るかが課題である.