日本内科学会雑誌
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骨髄細胞移植を用いた虚血下肢患者への血管再生医療
松原 弘明
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2003 年 92 巻 5 号 p. 877-883

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抄録

骨髄細胞には血管内皮細胞,心筋細胞,平滑筋紹胞などの心血管系構成細胞の幹細胞が含まれる.さらに,骨髄細胞自身が強力な血管新生因子であるVEGFやbFGFを分泌する.ヒト虚血肢(ASO・Buerger病)に対して自己骨髄単核球細胞を利用した血管新生療法を久留米大学・自治医科大学と共同で開始した.外科的・内科的治療によっても血行再建の認めない患者45人の虚血下肢に対して自己骨髄細胞移植をdouble-blindedにて実施した. 45人中31人で下肢の血圧が1月後には10mmHg以上上昇し,トレッドミル歩行距離は約2.9倍以上増加し,下肢の終痛は45人中39人で消失した.下肢潰瘍は31人中27人で完全に治癒した(Lancet 360: 427-435, 2002).この血管新生治療は循環器領域では初めての細胞移植医療であり,内科・外科的治療の困難であった末梢性血管疾患への再生医療として注目され,冠動脈疾患への適用へと進展が期待される.

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