抄録
症例は43歳,男性.主訴は易疲労感.小球性低色素性貧血を認め,消化管出血を疑った.上部下部消化管検査では特に異常なく,有管法の小腸X線検査でTreitz靱帯より約30cm肛門側に長径約4cmのoverhanging edgeを伴う不整な全周性狭窄を認め,進行空腸癌と診断した.空腸部分切除術を施行し,標本上大腸癌取り扱い規約に準じ,長径65mmの2型(se)とその口側約6cmに術前に指摘できなかった長径22mmのIIa型(m)を認めた.多発空腸癌の報告例は稀であり, IIa型を術前診断できなかったが, 2型の空腸癌の診断に有管法の小腸X線検査は有用であった.