抄録
症例は73歳,男性.発熱と意識障害に続いて,全身に散在する疱疹と痙攣が出現した. MRIで右側頭葉の出血性病変と脊髄病変を認め,髄液では単核球が増加し水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のDNAが陽性であった.血清・髄液ともVZV IgM低値, IgG高値であった. VZVの再活性化による髄膜脳脊髄炎と診断しアシクロビル等で治療したが,経過中に薬剤性腎不全や肺炎を併発した.悪性腫瘍やhuman immunodeficiency virus感染の合併はなかった.免疫不全状態にない健常成人に,中枢神経系病変を伴う全身性の汎発性帯状疱疹が発症することは稀であり,診断・治療ともに苦慮した症例であった.