抄録
吉村冬子フチは、鵡川地方のアイヌ文化伝承者である。幼少期はチセの中で過ごし、父親母親が交わすアイヌ語を聞きながら育った。後世は、言葉や芸能、生活習慣などを伝承する普及活動に務め、冬子フチの姉にあたる新井田セイノフチと共に各地でカムイユカㇻなどの口演に出向く機会も多くあった。本研究ノートでは、冬子フチの伝承を家庭内で受け継いでいる孫の押野・秋山(執筆者)が、冬子フチが発信してきたアイヌ文化について冬子フチに関連する資料と照らし合わせながら報告する。加えて、両執筆者が勤務する民族共生象徴空間「ウポポイ」、文化振興部と国立アイヌ民族博物館での教育普及活動、鵡川地方のアイヌ文化を紹介する各自のプログラムでの取り組みを分析することで、「鵡川地方のアイヌ文化伝承者、吉村冬子フチの教え」に迫り、冬子フチに関する資料と位置付ける。