2025 年 2025 巻 20 号 p. 1-
2021年,農林水産省は持続可能な食料システムを構築するため,生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」(みどり戦略)を策定しました.みどり戦略では,目指す姿(14のKPI:重要業績評価指標)と道筋(10年ごとの目標)を提示し,消費者理解の醸成とともに,生産者による意欲的な取り組みを引き出し,社会実装を進めることを基本とします.そして,食料・農林水産業の脱炭素化,化学農薬・化学肥料の削減など環境負荷低減を図るとともに,スマート農機を活用して労働生産性を向上させ,農業生産人口減少にも対応します.みどり戦略の実現は,持続的な産業基盤の構築,豊かな食生活,地域の雇用確保,そして安心して暮らせる環境の継承をもたらすと期待されます.
農研機構では,14のKPIのうち,「CO2ゼロエミッション化」「化学農薬の削減」「化学肥料の削減」「有機農業の拡大」に関係する要素技術を中心に開発してきており,現在,それらの要素技術を導入するモデル的先進地区を技術的に支援しています.本特集では,すでに現地に導入されている技術やこれから導入が期待される技術のうち,特筆される13の技術を紹介します.今後,これら要素技術の横展開を図るだけでなく,KPI達成に向けた新たな技術を持続的に開発してイノベーションを創出することを農研機構のミッションと位置づけ,みどり戦略の実現に貢献してまいります.