畝内に条状に肥料を施用する局所施用技術は,機械化が進展する以前より用いられてきた肥料の利用率が高い技術である.畝立同時二段局所施肥機は,畝内の上層と下層の二段に条状に肥料を施用することで,高い肥料の利用率と安定した初期生育を両立した機械である.本報では,畝立同時二段局所施肥機の基本的な性能と露地野菜の栽培における肥料節減効果,今後利用拡大が予想される有機質資材を利用する際の注意点をまとめた.作業能率の面では,ベースとなった嬬恋村慣行機の特徴である培土器で畝立を行う構造を活かすことで,一般的な畝立て施肥機と比較し,作業能率が2~4割の向上となる試算が得られた.肥料節減効果の面では,群馬と鹿児島で実施したキャベツ等の栽培試験において,慣行の局所施用法,及び全面全層の施用方法に対し,3割減肥した場合でも同等の収量が得られることを確認した.有機質肥料の利用においては,平均粒径が2~3 mmの範囲を超える円柱状の肥料を用いた場合に,短期的な肥料散布量の変動が大きくなる場合があった.このため,粒形が大きい肥料を利用する場合は,低い成分量で肥料の散布総量を増やす低濃度大量散布となるような施肥設計が望ましいと考えられた.
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