教育方法学研究
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英国のメディア教育の枠組みに関する教育学的検討 : メディア・リテラシーの教育学的系譜の解明を目指して
小柳 和喜雄山内 祐平木原 俊行堀田 龍也
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2003 年 28 巻 p. 199-210

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抄録
本論は,これからますますメディア・リテラシーの実践研究が積み重ねられてくる前に,その視点に幅を持たせ,よりわが国にとって求められるメディア・リテラシー教育のあり方を探求していくために,その教育活動を進める考え方の枠組みを先行研究をレビューすることで明らかにすることを目指した。とりわけ,メディア・リテラシーを考えていく際に,必ず源泉として参考にすべき人物として指摘される,英国のLen MastermanとDavid Buckinghamを中心に,英国のメディア教育論の論理構造とその成立背景を探った。MastermanやBuckinghamは,映画・スクリーン理論やカルチャラル・スタディーズなどの影響を受けながら,批判的教育学を参考に,またそれを批判的に乗り越えようとして,メディア教育を論じていることが見えてきた。その主張している内容は,わが国でよく紹介されてきているカナダのメディア・リテラシーのテキスト内容や教育方法と重なる点が多い。しかしそれらがどのような教育的脈絡(必然性)から生じてきたものか英国のメディア教育は示してくれた。ところが,現在,わが国で紹介されているメディア・リテラシーの諸論の中では,この点が,明確にされず,通時的というよりは共時的に理論の紹介がなされ,それに基づく実践を生み出してきている。メディア・リテラシーの実践の幅を広め,豊かにしていくためにも,さらにメディア・リテラシーの教育学的系譜を丁寧に明らかにしていく作業が求められてきていることを指摘している。
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© 2003 日本教育方法学会
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