抄録
本研究は,児童の自己評価能力を育成する方法を明らかにすることを目的とした。この点を明らかにするため,児童の自己評価能力の育成方法に関し,小学校の教師2人を対象に事例研究を展開した。その際,その能力の育成のための教師の指導方策を記述した。これにより,両者に共通して見られる育成原則を抽出し,それを育成原則として提案し,モデル化した。具体的な指導方策としては,(1)評価者に自己の他者評価をメタ評価させること,(2)他者の活動の姿を可視的にする学習環境を整備することが,各々の事例から確認されている。結論として,両事例の教師に共通して見られたのは,「児童が他者を見る目を活用する」という育成原則であった。これは,先行研究において指摘されている「自己が自己を見る目の活用(メタ自己評価)」や,「他者が自己を見る目の活用(他者評価)」といった自己評価能力の育成原則を拡充するものである。また,その知見の適用範囲が、中堅教師からベテラン教師にまで有用なものであることが確認された。