教育方法学研究
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プランゲの学校における教育不要論の論理 : 「教育的教授」を解体する「教授学的差異」(Didaktische Differenz)
牛田 伸一
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2006 年 31 巻 p. 49-60

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抄録

ヘルバルト(Herbart, J. F.)が理論的体系化を図った「教育的教授」の一般原理は,ドイツ教授学の中心問題として絶えず議論が交わされてきたが,近年では「教育的教授ルネッサンス」が標榜されるほど注目を集めている。1980年以降の学校改革構想が,この一般原理を理論的な拠り所に採用したからである。そのため,この「教育的教授」は現在では,広く学校論の視野から考察されている。しかし,本研究において批判的吟味の対象としたプランゲ(Prange, K.)は,こうした学校改革構想に批判的な見解を提示し,学校の教育的な役割の無視をアンチテーゼとして投げかけた。それでは,なぜプランゲは学校における教育的な役割の無視を結論するのだろうか。どのような論拠からその結論は導かれているのか。そしてどのような代替案を提示しているのか。本研究は,これらの問いを解明することを通して,「教育的教授」に内在する「教育学的楽観主義」の性格を浮き彫りにすること,そして彼の消極的な代替案そのものに前提とされる教育構想の積極的な可能性を明らかにすることを目的とする。検討の課題は以下の三つに整理され得る。一つは,80年代のドイツ学校教育政策の動向を確認することである。次に「教授学的差異」の意味内容を考察することが二つめの課題である。そして最後にプランゲの代替案を詳細に吟味することを課題とする。

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© 2006 日本教育方法学会
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