抄録
本研究の目的は,学問的知識と日常的経験を統合する学習が展開される教室の対話空間を「第三の空間」と見なすギュティエレス(Gutierrez, K.)らの考えに基づき,第三の空間を成立させる要件となる教師の対応の特徴を明らかにすることである。その要件の1つである教師のスクリプトを「崩壊させるアンダーライフ」を構成する子どもの行動として,授業中の子どもの私語と,私語に対する教師の対応に着目した。小学6年生の授業中の子どもの私語とそれへの教師の対応が見られた3場面における教師と子どもたちの発話の内容を分析し,それぞれの教師の対応の特徴を考察した結果,以下の2点が示された。第1に,第三の空間を成立させる教師の対応には,(1)私語を即座に注意するのではなく,私語の内容を尋ねてそれを発言する機会を子どもに提供する点,(2)一見すると学習内容と関連しない私語の内容と教科書の内容とを関連づける解釈をして,その解釈を提示する点,(3)私語の内容について質問をくり返す点,の3点に特徴があることが示された。第2に,これらの特徴がある対応のいずれも行うことが第三の空間の成立の要件となり,いずれかの対応だけでは第三の空間が成立しないことが示された。第三の空間を成立させる教師の対応は複雑であること,また,第三の空間を成立させるには,教師が教師スクリプトを維持し授業を構造化する役割から離れる必要があることも示唆された。