抄録
今日の政治問題に、政治資金パーティーをめぐる「裏金」問題がある。メディアでは、この「裏金」問題が盛んに報道され続け、先の選挙では争点の一つになったと言われている。一方で、「裏金」問題の本質は、法的には政治資金収支報告書への「不記載」であり、「裏金」という表現は定義が曖昧で多義的なため、正確性に疑義が生じる。また、議員や派閥によって、「裏金」と報道されるのか、「不記載」と報道されるのかが異なる例も見られ、公平性の観点からも問題提起がされうる。意思決定研究では、意思決定問題における言語表現が、意思決定の結果に影響を与えるというフレーミング効果の存在が示されているが、これを踏まえると、「裏金」という報道フレームが、世論形成や投票行動に影響を与えた可能性がある。こうした問題意識のもと、本研究では、実際にメディアが誰を対象に「裏金」の表現を用いているのかについて検討をした。方法として、主要な新聞の社説を対象に、データベースを用いて検索を行い、「裏金」または「不記載」の表現が使われている対象者について整理した。その結果、全体としては、自民党全体と安倍派に対して「裏金」の方が使用頻度が高かったこと、岸田派と二階派に対して「不記載」の方が使用頻度が高かったこと、その他の派閥に対しては、そもそも「裏金」や「不記載」が使用される頻度が低かったことが明らかとなった。したがって、新聞社説において、「裏金」と「不記載」のフレームの使用に偏りがあることが示唆された。