本研究の目的は,従来の保育記録と保育者の「葛藤」概念の検討をとおして,集団保育に有効な園内研究のあり方を明らかにすることである。集団保育における遊びや幼児同士の人間関係を成立させているものは,モノ・人・場の関係性である。河邉(2013)は,こうした関係性を踏まえ,全体環境が捉えられる保育記録を提案した。これは,特定の子や遊びにのみ着目した従来の保育記録とは異なり,大変画期的であったが,河邉の記録には保育者の位置が記されておらず,また,どのようにしたら保育者が遊びに関わりながら全体を見ることを可能にするのかといった規範理論が示されていないため,保育者が集団を対象としながら幼児個々の自己実現を保障するといった両義的な「葛藤」を想定したものではないといえる。
本研究により,集団保育における「葛藤」概念とは,保育者が担任として全体状況を把握しながら一つ一つの遊びや個々の幼児の要求に優先順位をつけて援助せざるを得ない状況に生じる悩みであることが明らかになった。その「葛藤」を質的に変容させ,集団保育の保育課題解決に有効な園内研究を実施するためには,以下の重要性が認められた。
1.集団保育という制度的制約を踏まえた規範理論を前提に置き, 全体状況が捉えられる環境図を活用する
2.1のキー概念を用いて指導計画や保育実践映像を読み解き,保育者同士の「対話」を促す