教育方法学研究
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原著論文
コア・カリキュラム連盟における経験主義と本質主義
― 梅根悟と海後勝雄の対比に焦点を合わせて ―
中西 修一郞
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2017 年 42 巻 p. 35-45

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抄録

 本稿では,梅根悟と海後勝雄の論を対比することで,画一的に捉えられてきたコア・カリキュラム連盟の三層論に,経験主義と本質主義という両側面があったことを明らかにした。まず第一章では,梅根の論を,単元区分の変遷と問題解決学習論に基づいて検討した。梅根は学習を子どもにとって「不測の産物」であるべきだと考え,子どもの立場に立つことで分析した。問題解決学習論はその成果であり,これによって三層論を基礎づけたのである。第二章では,海後のカリキュラム論を,学力論と問題解決学習論に着目して検討した。海後は,教育における科学と技術のあり方についての問いを戦前から追究しており,その帰結として,戦後はコア連において,特に能力表の作成を主張するなど教育内容を問うことになった。彼は学力を論じる中で,知識の羅列ではなく法則を見出すことが重要だと考えており,知識の構造の議論への未発の契機となっていたと言える。このように,本質主義的な側面を強調した学力観に支えられた海後の問題解決学習論は,習得すべき知識や解決すべき問題に応じて,学習の場を用意することに主眼が置かれていた。第三章では,両者の理論を,経験主義と本質主義という論点から対比した。カリキュラム論として見た場合,両者の相異は三層論における問題単元に集約的に表れている。梅根と海後それぞれが影響を与えた実践においても,問題単元には差が生じていることが確認できた。

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